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大阪高等裁判所 昭和34年(ラ)18号 決定 1960年9月14日

抗告人 田井カルヱ

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告人は原審判を取消し、本件を和歌山家庭裁判所に差戻すとの裁判を求めるので、なんらの抗告理由を主張しないけれども、本件は、応召中の相手方から昭和一九年四月二五日付発信の手紙で相手方との婚姻届出の委託を受けた抗告人が、昭和二〇年三月三日右婚姻届出をなしたところ、昭和二二年一〇月四日に至り、相手方は既に昭和一九年八月一三日戦死した旨の公報に接したので、抗告人はこれを理由として原裁判所に対し、相手方及び和歌山県日高郡中津村大字船津四二五番地筆頭者上田福松の戸籍中抗告人の身分事項欄の前記婚姻年月日を昭和一九年四月二五日と訂正することの許可を求め、原裁判所がこの申立を却下したため、抗告人はこれに対して即時抗告の申立をなしたものであることが記録上明らかである。

しかしながら相手方との間になされた前記婚姻の年月日を抗告人主張のような理由で昭和一九年四月二五日と訂正することについては、戸籍法第一一三条あるいは第一一四条の適用がなく、その許可を原裁判所に求め得べきものではない。

けだし抗告人主張の如き事実関係が存するものとすれば、本件については同法附則第一三八条により、昭和一五年法律第四号「委託又は郵便に依る戸籍届出に関する法律」の適用があり、抗告人は戸籍法第一一四条により相手方との前記婚姻に関する戸籍の記載を抹消した上、特別家事審判規則附則により、届出人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、戸籍届出の委託についての確認の審判を求め、その審判があつたときは、前記法律第四号により改めて婚姻届出をなすべく、右審判があるにあらざれば、婚姻届出をなすことを得ないものと解すべきであるからである。

そうだとすると原裁判所が前記の如き戸籍訂正の許可を求める抗告人の申立を却下したのは正当であつて、本件抗告は理由がないから、これを棄却すべきものとし主文のとおり決定する。

(裁判長判事 大野美稲 判事 岩口守夫 判事 藤原啓一郎)

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